Beachside Magazine vol.48 「うつろいゆくもの」
うつろい
ビーチサイドマガジンをはじめて数年。
過去紹介してきた、サブマリンドック、JJMONKS、メイン、胡海亭、といった店が姿を消した。
JJMONKSはABC MARTになった。客足はよくなさそうだ。ABC STOREなら面白かったのに、と思う。
メインはsundishという店になった。ついでに隣に稲村ガ崎温泉ができた。
胡海亭は元々カレーが美味しいと評判の店だったが、今はあっぷーがるというインド料理店になった。オーナーが変わったかどうかはわからないが、現場にいるのは(恐らく)インド人だった。
店が変わったときに、オーナーが変わったのかどうか、なぜか気になる。そして、オーナーが変わっていないと知ると、なぜか少しほっとする。
鎌倉の東急の駐車場の隣にあった小林鞄店という店がコバカバという飲食店になった。味も雰囲気も良く、人気の店だ。
コバカバという店名は小林鞄店に由来するらしい。そうして名前の一部が引継がれるだけでも、全てを無に帰してスクラップビルドするのとは、感覚的に全くちがう。
100年が一瞬で無に帰すかなしさ
湘南には昔からある広い土地をもった家というのが少なからず存在する。
しかし、立派な日本家屋が建っている敷地も、家主を失った瞬間に、3つ4つに分割されて売られてしまう。柱も梁も庭にあった立派な松も思い出も歴史もなにもかもひとつの痕跡も残さず廃棄されて、草一本ない「きれいな」更地になる。そうしてそこには30年後には粗大ゴミと化すであろう醜悪な建売住宅がぎゅうぎゅうに押し込められる。
木の1本、柱の1本でも残せないのか。歴史や思いの一端でも新しい住人に引継がれることはないのか。
顔を見て売り買いできればいいのに、と思う。そうすればきっと土地とお金以外の何かがやりとりされるのに、と思う。
ものを売り買いするとき、「顔が見える」ということは大事なことだ。
顔が見えなければ、安全とはいえないものでも平気で売ってしまう。
顔が見えなければ、想いが伝わらないことがある。
顔が見えなければ、そもそも想いなんて必要ないのかもしれない。必要なのは利益だ。
人と人とが顔と顔をあわせて、いろいろなものを伝えていける世の中になって欲しい。
顔を見て売る
湘南には「顔の見える作り手」が多い。
安全なもの、想いのあるものを買うのが好きな人にとっては、湘南は良いところだ。
逆に、デパートで売られるブランド品が好きな人にとっては、湘南に住むのは苦痛かもしれない。
想いとセットになったモノは、おいそれと捨てられないものだ。
古いものを捨てずに直しながら使う。モノを捨てないと、新しいものを買わなくなる。木っ端1本、布一切れを大事にするようになる。
消費型から循環型へ。
モノを長く使うには、本物を見極める目が必要だ。ニセモノはすぐにだめになる。
50年前からあるものは、50年後も使える可能性が高い。
最近出てきたものに関しては、見極めが難しいが、迷ったら作り手に聞いたらいい。
顔が見えればそれができる。
50年前を見て、50年後を考えて。うつろいやすい世の中だからこそ変わらないもの、残していくもの、についてきちんと見つめながら生きていきたい。
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編集後記
今、新居を探しているせいで、そういった内容になってしまいました。特に街並みについて、言いたいことが山ほどあるんですが・・。自分も狭い土地に窮屈な建物を建てることになるのかもしれません。それでも少しでも街が明るくなるような家を建てたいと思います(建てられれば!)。
写真は先月キャンプに行ったときのものです。この景色はいつまでも変わらずにあって欲しいですね。